七転び八お記 -昔あった交通事故のお話し① –

普段の生活”のありがたさ  

これまでの人生で、最大の危機は20歳の1月6日に交通事故に遭ったことだ。これは生命の危機だった。  

バイト先からの帰り道、真夜中にスクーターで走っていて、停まっているトラックに気付かず、正面から衝突してしまった。現場はちょうど下り坂になっており、雨が降っていたこともあって、トラックの存在に気づくのが遅れてしまった。かなりの爆音とともに正面から衝突し、意識が飛んでしまった。  

痛みと共に意識が回復したが、今まででに感じたことのない、想像を絶する痛みだった。これが”死”の直前に体験する痛みだと思った。生き残ると、もう一度その痛みを経験しなければならないと考えると、このまま死んでしまった方がラクかもと思ってしまった。  

そのうち救急車が到着した。近所の方が事故の音にびっくりして、出てきて救急車を呼んでくれたらしい。後日、事故したバイクの引取りをした親戚から聞いた話だが、あまりの衝突時の音の大きさで、死んでしまったんだろうと近所でうわさしていたらしく、生きていたことを知って驚いたそうだ。  

救急車で最初に搬送された病院では処置できず、次の受入れ先の病院がなかなか決まらなかった。数時間待たされた後、20キロ離れた神戸大学病院へ移送された。そこから、いざ手術となると親の同意が必要らしく、翌朝、親の到着を待ってようやく手術することができた。事故が発生してから12時間経っていた。  

事故の結果、右手首骨折と右足の開放性骨折(骨が皮膚の外に飛び出る!)、そして前歯の上下全てが脱臼、顔はパンパンに腫れていて倍ぐらいの大きさになってしまった。残念ながら、当時の写真はない。事故があったことすら忘れてしまうぐらい回復した今となっては、当時の写真があったらと残念に思うことがある。  

手術のあとは、精神安定剤や麻酔、栄養剤など沢山の管に繋がれて、3日間集中治療室で過ごすことになった。集中治療室で眠っているときに、毎日普通に暮らしている夢をみた。そして目を覚ましたとき、目に飛び込んでくる病室の白い天井が、これが現実だよと残酷なまでに見下ろしている。夢が現実であってほしい、現実が夢であってほしい、希望が夢に現れ、目が覚めて現実にひき戻される、これを何回も何回も繰り返した。  

昨日まであった、当たり前の生活から、急転直下の出来事。こういう時に、毎日の普通に過ごせている事のありがたさが良くわかる。日々健康であること、普通に生活できている事にもっと感謝すべきと考えさせられた。 再返信する 転送する その他の操作

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    SBL通信H29年1月号